経済の縮小(宇仁宏幸)

経済学では、主流派、非主流派を問わず、「経済の縮小」という概念はほとんど使われない。おそらく大部分の経済学者の視野の中には、このような観点や課題は存在しないだろう。マルクスが『資本論』のなかで、「拡大再生産」との対比で「縮小再生産」に触れている程度である。しかし、それも思考実験の一環であって、マルクスの主要関心は「拡大再生産」の分析にある。経済学者の関心が経済成長(「持続可能な」という形容詞がつく場合もあるが)に向かう理由は、資本主義という現代世界の主要な経済システムそのものが、「成長」という基本的特性をもつからである。